礼拝説教 2008年 9月14日

「 神の富と知恵 」

ローマの信徒への手紙10章33~36節
原田多恵子牧師

教会の言葉 一覧へ戻る

 この度、「パウロの足跡と黙示録七つの教会を辿るトルコの旅」に行かせて頂き豊かな経験をしました。
 本日の教団教会暦によるテキストは、パウロの稀にみる、感嘆の言であります。「ああ、神の富と知識のなんと深いことか。だれが神の定めを究め尽くし、神の道を理解し尽くせよう」という言です(33節)。英語の聖書では「頌栄」だというのがあります。又、文語訳やその元になる英語の聖書では「神の知恵と知識の富の深さ」となっております。いずれにしても、9章~11章に亘るパウロの嘆きの同胞イスラエルに対する想いの結論なのであります。「わたしには深い悲しみがあり、わたしの心には絶え間ない痛みがあります。わたし自身、兄弟たち、つまり肉による同胞のためならば、キリストから離され、神から見捨てられた者となってもよいとさえ思っています」(9章2~3節)という深い愛の表れです。
 この度の旅行で、全行程を11日間、東から西へ、パウロの足跡を辿って、このことばが実感できました。パウロはやはり、今のトルコの出身とはいえ、ユダヤ人であったのだと思います。トルコの中央あたりにあるタルスス(現在の呼び名)には、世界各国からキリスト者が訪れて、礼拝の時をもっています。「生誕の地」で私共が聖日に当たるので、礼拝をもっている時、アメリカ・ジョージア州から来た男性が共に賛美歌を歌ってくださいました。トルコは現在、政教分離とはいえ、98%がイスラム教の穏和なスンニ派とのことですが、考えてみれば、キリスト教の生誕の地イスラエルに次いで、キリスト教の伝わった地であることを再認識させられました。
 パウロは、十字架の死から復活させられた主イエスに声をかけられて180度転換させられて、キリスト教伝道者となり、シリアのアンティオキアをスタート地として、異邦人伝道に用いられました。その行程を船と徒歩で伝えていくのは並大抵のことではなかったろうと、あらためて想わされました。トルコは日本の2倍の国土とか。第一回伝道旅行でシリアのアンティオキアから出発し、ディアスポラのユダヤ人会堂を用いピシディアのアンティオキアで、2週間に亘り、大勢のギリシア人の改宗者やユダヤ人が、ほとんど町中の人が集まってきたので、バルナバと共に説教し「神の恵みの下に生き続けるように勧め」、伝道が成功しました。それをねたんだユダヤ人が反対したので、「神の言葉は、まずあなたがたに語られるはずでした。だがあなたがたはそれを拒み、自分自身を永遠の命を得るに値しない者にしている。見なさい、わたしたちは異邦人の方に行く。主はわたしたちにこう命じておられるからです。『わたしは、あなたを異邦人の光と定めた、あなたが、地の果てにまでも救いをもたらすために』」(使徒言行録13章46~47節。ねたむのは熱心なユダヤ教徒)。かくしてパウロたちは足の塵を払い落として又、次のイコニオムへ行きました。そこから世界宣教が始まりました。
 想えば、この時から、パウロの心の底にはユダヤ人同胞への深い痛みがあったわけであります。ローマ書では、3章に亘って語っています。
 ユダヤ人の一部が、信仰によらずして「行い」によって、律法を全うすることに努め、イエス・キリストによる救いを拒否することによって神より捨てられ、救いが異邦人に移ったことは、異邦人が救われるための神の働きであったことだと慰めを言っています。「もし彼らの捨てられることが、世界の和解となるならば」(11章15節)との悲痛な想いを吐露しながら、しかし神は異邦人の救いが地の果てまでに至るならば、必ず、イスラエルを再興させて、救って下さると確信しています。「福音について言えば、イスラエル人は、あなたがたのために神に敵対していますが、神の選びについて言えば、先祖たちのお陰で神に愛されています。」それは「神の憐れみ」によるのだと、11章28~32節で強調しています。
 この深い神の憐れみが「神の富」だというのです。「神の知恵・知識」は、ユダヤ人を用いて、全世界を救い、新しい世界をキリストの再臨によってもたらすということです。イスラム教徒のガイド、イシュマエル氏は、キリストの再臨を信じていると言っています。この旅を通して、神の救いは、パウロやペトロたち使徒によって、ユダヤから、トルコを経て、ヨーロッパに、世界に、私共にまで与えられたことを再認識させられ、感謝の極みであります。

 

月報「あかしびと」第451号 巻頭言

 

教会の言葉 一覧へ戻る